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2005年10月21日 (金曜日)

living memory

来週の火曜日、ゼミで修士論文の発表があるので、集めていた論文・文献を読んでいたところ、living memory(リビングメモリー:生きている記憶)というものを発見しました。

渡辺保史氏の『情報デザイン入門:インターネット時代の表現術』(平凡社新書、2001年)で発見したものです。

このブログでは何度か言ってるんですが、僕は記憶(思い出)ってものにかな~りのこだわりを持っています。過去のエントリーで記憶に関するものがいつくかあります。
http://sibashoo.cocolog-nifty.com/kaf/2005/06/post_7aff.htmlなどです。

リビングメモリーというのに興味を持ってのも、こんな僕の趣向があったためかもしれません。

で、本題なんですが、リビングメモリーは、ヨーロッパの家電メーカー最大手のフィリップスのデザイン部門が手掛けたプロジェクトで、EUの「知的情報インターフェイス(Intelligent Information Interface)研究のひとつとして資金提供を受けて実施されたものらしいです。

彼ら(デザイン部門の方達)の目標は、「地域社会に生活する人々が、それぞれの知識や経験を共有する可能性を提供し、それを支える新しいツールの開発」とのこと。

で、どういったツールを開発したかと言いますと、地域コミュニティのなかに四つの「結節点」となる場所として、「学校」、「病院」、「ショッピングセンター」、「パブ」を設定して、それぞれにあった情報交換のモデルをつくったらしいです。

これだけじゃ、どういったことが良くわからないですよね。渡辺氏が執筆してる文章で、わかりやすく説明されたものがあるので引用します(https://secure.kanshin.jp/bitandink/index.php3?mode=keyword&id=191706より)。

出来上がったLiMe(リビングメモリーのこと)のプロトタイプは、カフェテーブルやバスの停留所など公共空間のオブジェに組み込まれたタッチパネル式のインターフェイスや、個人が家庭やPDAでアクセスできるものなど、いくつかが制作された。カフェでお茶を飲みながらスクリーンに流れてくる色々な情報を眺め、気になった情報は自分が持っている「トークン」というコイン状の物体に蓄積したり、コメントを書き込んだり、友人とそれを話題に談笑したり....と、都市の中での情報との出会いやコミュニケーションを支援するため情報技術が「さりげなく」介在しているような状況を非常にうまくデザインしている。

こりゃすごいですね。(僕の)リサーチがたりないので、このliving memoryプロジェクトが地元エディンバラの方にどう受け止められたのかなどはわからないんですが、この試み自体が画期的なものですよね。

修士論文における、僕の問題意識は、

「いかに都市計画・まちづくりの中に(利害を被る)人々の意見を反映させていくか」
「いかにコミュニティというものを人々(そのコミュニティの成員)の手で復権していくか」

というものなので、living memoryの試みは、とて~も参考になります。

渡辺氏は、『情報デザイン入門』の中で、リビングメモリープロジェクトを以下のように評価しています。

リビングメモリーのプロジェクトが秀逸だと思われるのは、次のようなポイントをおさえているからだ。まず第一に、「地域にとって、最も豊かな情報資源は、そこに住んでいる人々自身にある」ということ。第二に、「地域には、情報活動の核となる結節点がいくつか既に存在している」こと。そして第三に、「人が情報(=もっている人)にアクセスするには、それ相応の物語(時間的順序や構造)がある」こと…(215頁)

まちづくりに関する研究で、社会学的な観点から、これらのポイントを指摘する研究者は多いんですが、その実現の方法を巡っては、具体的意見がなかったり、有効性のなさそうなものが少なくありません(あくまで、僕が調べた限りです)。といっても、あくまで研究者レベルの話しで、実践としては既に様々なものがあります。市民(が発信する)メディアや、地域ポータルサイト、地域情報誌などが、リビングメモリーと同種の試みと位置づけられると思います。また、早稲田大学後藤春彦研究室で進められている「まちづくりオーラル・ヒストリー」も、例として挙げられるでしょう。

こういった様々な試みをある程度を体系化し、ひとつの「柔軟な」モデルを抽出できればいんじゃないのかなと考えています。

来週のゼミでは、以上のことを踏まえながら、

1)まちづくりとは何か
2)まちづくりにとって重要なのは何か?
  → コミュニティの復権(コミュニティとは何か?)
3)コミュニティ復権の方法は?
  →リビング・メモリー、まちづくりオーラル・ヒストリー
4)問題点(歴史学の観点から)

といった感じで発表する予定です。

面白くなりそ。


・渡辺保史氏のブログ
http://nextdesign.cocolog-nifty.com/blog/
・渡辺保史『情報デザイン入門:インターネット時代の表現術』(平凡社新書、2001年)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582850960/ref=ase_kanazawaartfe-22/249-4164006-9393913
・『情報デザイン入門』サポートサイト
http://www.heibonsha.co.jp/books/infodesign/

・フィリップス
http://www.philips.com/index.html
・フィリップスのCEO & Chief Creative Directorが語るリビングメモリー
http://www.design.philips.com/about/design/section-13452/article-14295.html

■日記□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

10月19日 研究室に泊まりで、発表の準備。
10月20日 発表の準備の続き、リクナビで数社にエントリー。
10月21日 就職活動サイトのチェックと方々へメール。

■pick up news□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

道と泊村などが原発事故想定し訓練 情報伝達と避難を迅速に
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20051021&j=0022&k=200510217477

原発事故…
怖い…

5~8歳の頃ドイツに住んでいて、チェルノブイリを体験したもんで。

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